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シミュレーションによる 壁体内通気住宅の性能評価

自然エネルギー活用住宅普及促進協議会 アドバイザー
東京大学生産技術研究所
加藤 信介

1.研究の背景と目的

壁体内通気住宅の概要と期待される導入効果

壁体内通期住宅の概要

システムの概要(夏)
壁体内の通気

導入効果

 

研究目的

研究目的

※今回は緑色の部分の検討を行った

 

2.研究方法

検討はコンピュターシミュレーションにより行う

使用したソフトは、米国で開発された建築物のエネルギーシミュレーションソフト

TRNSYS17/TRNFlow
・TRNSYS:熱回路網計算を行う。
・TRNFlow:TRNSYSに組み込んだ換気計算ソフト。熱回路網、換気回路網の同時計算を行う。

TRNSYS17   TRNFlow

検討はIBEC標準住宅モデルを用いる

検討はIBEC標準住宅モデルを用いる

 

建物モデルはこの標準住宅モデルをもとにした各スケジュール(人員、空調、換気、照明、給湯)は調査結果に基づき定められている

検討はIBEC標準住宅モデルを用いる

通気経路のモデリング

 通気経路のモデリング

・通気部分は図の青色の範囲。赤丸が通気抵抗となりうる箇所である。
・Aは通気のための開口。B、Fは開閉可能なダンパー。C、D、Eは横架材と断熱材の溝により、一定間隔で すきまが開いている。

 

壁体ゾーンの付加

  壁体ゾーンの付加   壁体ゾーンの付加   壁体ゾーンの付加  

・壁体内の通気を計算するため、居室の外側に通気層にあたるゾーンを設定した。
・水平方向に隣接するゾーン間での熱・空気のやり取りはないものと仮定する。

 

エアリンクの定義

エアリンクの定義

TRNFlowで図のようにエアリンクを設定し、各リンクに通気抵抗となる値を設定した。通気量は以下の式に基づいて反復計算が行われている。

エアリンクの定義

 

エアリンクの定義

計算条件 夏季 無風 の条件で 標準気象データ(建築学会)を使用

計算条件 夏季 無風 の条件で 標準気象データ(建築学会)を使用

建物

通気壁室外側 押出法ポリスチレンフォーム50mm
+空気層15mm+タイル10mm
通気壁室内側 石膏ボード13mm
通気壁厚さ 120mm(内側)
内壁・天井 次世代省エネ基準(Ⅳ地域)
複層ガラスU=1.8 W/m2K, 遮蔽係数=0.5
すきま風 なし

計算条件

内部発熱 あり(IBECの標準スケジュールに従う)
全般換気・局所換気 なし (壁体内換気を検討するため)
空調 なし/あり
床下地表面温度 20℃
気象データ 拡張アメダス(標準年2000年版, 東京)
外部風 なし
計算期間 夏期:7/21-8/21(+助走期間3日)

エアリンク

開口
面積A[㎡]
1.壁体-各部, 壁体同士 0.00299 ㎡/m
(壁面単位長さあたり)
2.棟通気ユニット-外気(EN) 0.0919
(壁面単位長さあたり)
3.小屋裏(ROOF2)-
棟通気ユニット(ROOFTOP)
0.0755
4.外気(EN)-床下空間 (BASE) 0.072
各定数 α=0.6, ρ=1.2, n=0.5

・通気壁の仕様(壁の構成、エアリンクの各開口面積)は実際の仕様に従って設定した。
・計算は、内部発熱あり、隙間風・換気・空調・外部風なしの条件とした。
・床下地表面温度は20℃に固定、エアリンクの各定数はα=0.6、n=0.5で固定とした。

 

3.計算結果 ― 自然換気の場合

通気量の検討

通気量の検討

 

・全体の流量(小屋裏通気口)は期 間平均で114.8㎥/h(この住宅の 0.5回換気量は144.1㎥/h)

・室温は外気温とほぼ同時に変動し ているのに対して、流量は2~3時 間の遅れを持って増減している。

 

壁面ごとの期間平均流量(上昇する方向を正とする)

壁面ごとの期間平均流量(上昇する方向を正とする)

 

・どの壁面も正(上昇方向)の流速 をとる。

・1階の平均で0.73cm/s、2階の平 均で0.88cm/sの流速がみられた。

感度解析 解析ケース

感度解析 解析ケース   感度解析 解析ケース

・住宅全体の通気量(小屋裏通気口)に対する、通気経路各部の影響の大きさの検討を行った
・通気抵抗となる通気壁・小屋裏通気口・床下通気口の各箇所について、開口面積の値を5倍もしくは0.5 倍に変更し、通気量の変化を検討した

 

解析結果

解析結果

単独要素を5倍

解析結果

単独要素を1/2倍

・各要素単体で開口面積を変更した場合、通気壁>小屋裏通気口>床下通気口の順に高い感度を示した。

・開口面積の変化に対して流量の変化は小さい

 

解析結果

複数要素を5倍

解析結果

複数要素を1/2倍

・3要素を5倍にすると大きく流量が増加する一方、1,2要素を1/2倍にするだけで流量が大きく低下→流量はもっとも通気抵抗の大きい個所に依存する。

自然換気の室温及び自然室温低下効果

自然室温の継時変化

自然室温の継時変化

 

自然換気の室温及び自然室温低下効果

通気の有無による変化
(通気時の室温-通気なし時の室温)

・一階LDで最大2℃、2階で最大3℃の室温低下が見られた。
・床下温度は外気を導入したことにより上昇している。

 

冷房熱負荷の低減効果

冷房熱負荷の低減効果 冷房熱負荷の低減効果

 

・期間を6-9月として冷房負荷の計算を行った。
・比較的に気温の低い日が多い6月と9月では、壁体内通気により月積算空調負荷はそれぞれ 21%、17% が削減され、気温が高い7月、8月では13%、14%の削減効果が見られた。
・この期間の平均で15%の削減となった。

 

4. まとめ

・夏期は通気層全体で住宅の全般換気0.40回/hに等しい量の通気量が得られた

・通気量に対する通気部開口面積の感度は通気壁>小屋裏通気口>床下通気口の順に高いが、通気量の変 化は開口面積の変化に対して小さい

・自然換気の場合、自然室温は期間平均で1.3 ℃低下し、冷房負荷は期間平均で15%削減された

・壁内通気は日射による室温上昇の抑制効果を持つ

・壁内通気は床下空気の温度が地熱効果で低下することが利用できるため、冷房負荷の削減効果が大きくなる