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有識者が語る 浅野良晴

浅野 良晴

信州大学工学部建築学科 環境設計学 教授(工学博士)
東京大学生産技術研究所 人間・社会部門 教授
センター長(工学博士)
J建築システム株式会社 代表取締役
博士(工学・農学) 一級建築士
浅野 良晴  

浅野 良晴 (あさの よしはる)

  • 信州大学工学部建築学科 環境設計学 教授(工学博士)

専門

  • 建築環境工学
  • 建築設備(空調計画、給排水衛生設備計画、積雪対策)

 

壁体内通気工法による自然エネルギー活用住宅の先進性【その1】

日本の断熱住宅の変遷の中で夏対策を備えたシステムがどのように誕生したか述べてみましょう。日本の断熱住宅の変遷の中で壁体内通気工法がどのように誕生したか述べてみましょう。北海道で高断熱高気密住宅が普及しだした30年程前に、本州でその重要性が認識されていきました。ところが、本州は東北から中国地方まで伝統に裏付けされた住宅が在り、日本海側から太平洋側まで、また標高も異なって様々な気候に対応したそれぞれの住宅に特徴があります。冬は北海道に匹敵するほど寒く、場所によってはたいへんな積雪が予想される地域が含まれています。高断熱高気密住宅の必要性は寒さ対策と省エネルギーを考えると当然でしたが、各地域で共通していることは夏の暑さ対策であり、それが重要な課題でした。

高断熱高気密住宅は密閉されていますので、室内と屋外の温度差が大きくなります。断熱を強化すればするほど、その傾向は顕著になります。いわゆる冬暖かく、夏は住めないほど暑いということです。そこで、夏は日本の伝統的住宅の特徴である通気を併せ持つこと、すなわち夏の最も暑い時期に向かって、外気に開放される機能を如何に持たせるかという点が開発の重点課題でした。それが壁体内通気工法であり、冬期は密閉され、中間期から夏期に床下からの壁体内通気によって外気を導入することでした。これは室内側から見た時に、外壁側からのペリメータ領域の縮小を意味しています。設置した断熱材内表面から始まるペリメータ領域に対して、冬期は壁内通気層の密閉により外気の影響を排除すること、中間期及び夏期は開放により外からの風を入れることです。こうして壁体内通気工法は完成し、昨今の激しい気候変動の中でその機能性に注目が集まっています。

ペリメータ領域:日射熱や外気の影響を受けやすい建物の外周部分

 

壁体内通気工法による自然エネルギー活用住宅の先進性 【その2】

木造住宅は日本の国土と自然に適しています。それは都市の森林とも言われています。木は二酸化炭素を吸収して育ちます。山で育つ森林は定期的に伐採し管理していかなければなりませんが、伐採された木が製材されて住宅に使われていることにより、炭素貯蔵の役割を再度果たしていきます。そのお蔭で森林は生物多様性を保つことができます。

壁体内通気工法は、住宅が保持する高い性能を長い期間維持することができます。高いレベルの断熱気密を施していながら、屋根裏から天井までの大きな空間を床下空間と連結させているこの住宅は、建設時の木材の状態をそのままで維持させることができます。その理由は前回(その1)で説明しましたので、そちらをご覧ください。

地球温暖化対策を様々な分野で実施している日本の中で、エネルギー情勢のひっ迫を背景に住生活において、ユーザーはエネルギーの消費を減らしながらも快適性を維持できるという機能性を求めています。自然エネルギー活用住宅の特徴は壁体内通気工法であり、夏は日本の伝統的住宅の特徴である通気を併せ持つこと、すなわち夏の最も暑い時期に向かって、外気に開放される機能を持たせ、冬期は密閉することです。中間期から夏期に床下からの壁体内通気によって外気を導入しています。これは室内側から見た時に、外壁側からのペリメータ領域の縮小を意味しています。設置した断熱材内表面から始まるペリメータ領域に対して、冬期は壁内通気層の密閉により外気の影響を排除すること、中間期及び夏期は開放により外気の通風を入れることです。

2年前に日本を襲った東日本大地震は、現在も多くの方々に厳しい居住環境を強いています。そうした中で夏の暑さにも、冬の寒さにも対応し、消費エネルギーを削減しつつ快適性を維持している、自然エネルギーを活用した壁体内通気工法は注目を集めています。日本の昨今の激しい気候変動の中で省エネルギーと年間を通した快適性を達成するという機能性を備えた住宅こそが必要なのです。